+++或る占い師の話+++


目に入る人、人、人。
俺は他人の行く末を盗み見ないようにじっと息を殺す。

未来を見透かす能力は実は物凄く厄介なもので。
自然に見えてきてしまうものだから俺は一人嫌悪感に陥るのだ。
本人すら知らないその人の未来を赤の他人である権利はあるのか。
それでも未来は滝のように目の中に注ぎ込んでくるのだ。

俺の苦悩はつゆ知らず、未来を尋ねる者が多いから
気付いたらそれが生業となっていた。
未来を見透かす能力は実は物凄く厄介なもので。
ときにはオブラートが必要な程に皮肉な運命を言わなくてはいけない事もある。
だがオブラートも口の中に入ってしまえば溶けてしまうから
結局は相手を傷付けるだけなのだが。

俺の中に答えはあったのだろうか。
いつしか俺は「運命=変えられる」という方程式を生み出していた。
未来を伝える度俺はこの事を嫌になる程相手に言い続けた。
未来を見透かす能力は実は物凄く厄介なもので。
だったらこの力に何の意味があるのかと叫び続けるのだ。
だから俺は言ってやる。
「何の意味もないから、俺に見えるんだろう」

未来を見透かす能力は実は物凄く厄介なもので。
だからその答えは物凄く簡単なもので。

とりあえずオブラートとあの言葉があればどうにかなるだろう。
あとはあの心持ちと。

商売道具を手に持って今日も俺は未来に立ち向かう。
今日も一日大きく深呼吸。

 
久々に手塚さんです。
ああいう不思議空間な人は好きです。
…というか、あそこには不思議空間な人が飽和状態な様な気がしますが(殴)
 
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