+カードノツナガリ+


ドアの開く音。
その音がした方を向くと、いつものように蓮が入ってきた。
蓮は俺が何かを手にしているのに気が付いたようだ。
「城戸、何をやっている?」
「何って…見ろよ、蓮。」
俺が蓮に見せたのは、古びて端が擦り切れたトランプ。
「さっき荷物を整理していたら出てきてさ。」
「随分と使い込んでいるな。」
「まあね。よくコレで遊んでいたからさ。」
ふと、思い付いた。
「なあ蓮。今、暇?」
「暇だったらどうする。」
「やらない?トランプ。」
「断る。」
分かっていた答えだけど、いざ言われてみると結構凹む。
とりあえず粘ってみる。
「いいじゃんかよ。どうせ下も終わったんだし。
 それに今日はもう何もないんだろ?」
「…まあ、そうだが。」
「じゃあさ、やろうよ。」
トランプを切りながらにっこりと笑ってみせると、
蓮は大きく溜息をついて部屋の奥へと歩いていった。

蓮と俺は向かい合ってお互いのベッドに座っている。
その間には小机を置いて、そこには何枚かのカード。
只今、ババ抜き中。
「蓮ー…取れよー…」
俺の手札は二枚。蓮は一枚。
勿論ジョーカーは俺の手の中。
蓮の手はカードの上を行ったり来たり。
そしてその手はクローバーの8を奪っていった。
「あーっ!!」
俺の負け。
「これで俺八連敗かよー。」
「いや、九連敗だな。」
俺がカードを切るのを、蓮は涼しい顔で見る。
「なんだよ、蓮強いなぁ。」
「俺がジョーカーを取ろうとすると、お前の顔がにやけるんだ。
 分からない方が可笑しいだろうが。」
「―――〜!!」
悔しくてカードを配る手に力が入る。
「おい、城戸…」
「何さ?」
「まだやる気なのか?」
「だって悔しいじゃんか。」
「俺は何ともないがな。」
こんな感じで俺達はだらだらと続けている。
「くそー……じゃあさ。」
「何だ。」
「蓮が十五連勝したら、俺何でも言う事聞くよ。」
「ほう。」
「但し!俺が一度でも勝ったら俺の言う事聞けよな?」
「無理だろうがな。」
「蓮…お前、本ッ当にムカつく奴だなー…」
負け惜しみを言いつつ、お互い手札を手にし、カードを捨てていく。
「俺さ、とっておきの戦法を見つけたんだ。」
カード越しに言う。
「戦法?」
「こう。」
手札の向こうで、俺は満面の笑みを浮かべてやった。
「これで分からないだろ?」
「馬鹿か…」
呆れたように横を向く蓮を見て、
俺は作り物ではない笑みを思わず零した。

只今十四試合目。
俺、十三敗中。
このままだとマジでヤバイと思う。
蓮は蓮で、
「城戸、今のうちに覚悟はつけておけ。」
と笑いながら言う。
悔しさに唸りながらそれでも顔は作り笑顔のまま。
ふと、手札越しに蓮を見る。

俺の作り笑顔も板についてきたのか、
蓮は少し厳しい顔でカードを睨みつける。

俺の手札は二枚。蓮は一枚。
勿論ジョーカーは俺の手の中。

真剣な顔でカードを見る蓮が可笑しくて、
思わず微笑んでしまった。
嘘じゃない笑顔。

その瞬間、俺の手からカードが一枚離れていった。

手元に残ったのは、ダイヤのジャック。

「蓮ジョーカー取ったー!」
嬉しさに声を上げる。
蓮はいつも以上のぶっきらぼうな顔で、二枚のカードを切った。
「まぐれだ。」
負け惜しみと共に、俺の前に出される二枚のカード。
片方は何かのジャック。もう一つがジョーカー。
俺は直感に任せてカードを引いた。

スペードのジャック。

「勝ったー!!」
一組となったカードを投げ出して、叫ぶ。
「蓮、言う事聞けよな!」
当の本人は悔しさに横を向いて頬杖をつく。
「…言ってみろ。」
「何が良いかなー。」
「早くしろ。」
蓮の言葉に苛立ちが浮かんでいるのを感じる。
「…じゃあさ。」
「何だ。」
「ライダーの戦い……やめにしない?」
「却下。」
「やっぱりねぇ…」
頭を掻いて更に考える。
蓮の方を見る。

俺と蓮との繋がりは、普通の言葉では言い表せなくて。
それはいつか殺しあう、あまりにも暴力的で理不尽なものだけど。
俺たちを繋ぐのは、一組のカード。
カード越しに見合う姿が、ナイトのそれと重なる。

「じゃあさ。」

暴力的で、理不尽で。
それでも、大切なものなんだ。

「生きろ。」
「何?」
「まあ…なんというか、
 命を投げ出すような事はやめようよ。」
「……」
「そう、生きろ。」
「…言われなくても、分かっている。」

そっぽを向く蓮を見て、小さく微笑んだ。

我侭な事かもしれないけれど、
この繋がりを、大切にしたいんだ。



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大変長らくお待たせいたしました;;
冴木カズサ様の6006番のキリリク「蓮と真司君の小説、和みバージョン」です。
小説で蓮さんの事書いたの、初めてでした;;
拙い文章ですが、どうぞお受け取り下さいませ。

 
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