あの、大雨の日。
私はある人間を拾った。


+++Picking up thing+++


部屋を見て、私、須藤雅史は固まった。

「…な…。」
『何だ、帰ってたのか?』
「何ですか!?この状態は!!」
思わず叫んでしまうのも仕方がない。
床に散乱した本。(出る前は、本棚に仕舞ってあったはずなのに。)
明らかに場所がずれている家具。(必要最低限のものだけで、こんな場所にはなかったのに。)
とにかく、ここにだけ嵐が来たような状態だった。
「ちょっ…聞いてるんですか!?浅倉威!!」
『聞いてる…。』
そう言いながらも、私の事は完全無視でヤキソバをまた啜るこの男。
数ヶ月前のある事がきっかけでここに住み着いている。
勝手に食事を取り、ふらふら出て行ってまた帰ってきたり、猫のような奴だ。
そして…あと二人。
「…ボルキャンサー!!ベノスネーカー!!」
壁にかかった鏡に大声で呼びかける。
耳鳴りのような音と共に二人の青年が鏡から出てくる。
【何だよ…。】
「一体、何があったんですか!?」
[雅史、実は…
【こいつが悪いんだ!!】
『何言ってるんだ!!お前がっ!!』
お互い胸倉をつかみ合っている二人を見て、大体予想がついた。
この二人の、些細な理由の喧嘩だろう。
「ボルキャンサー…またですか?」
[あぁ…止めようとは努力したんだが…。]
ボルキャンサーと顔を見合わせて溜息をつく。
そのうちボルキャンサーがベノスネーカーをなだめ、ミラーワールドへと帰っていった。
「まったく、何で私の仕事を増やすような事を…。」
その言葉に浅倉はむっとしたようにそっぽを向く。
しかし、次の瞬間、不敵な笑みを浮かべた。
『だったら、あの時拾わなければ良かったじゃねぇか…。』
浅倉の言葉に、はっと顔を上げた。


大雨の日の夜だった。
ミラーワールドでの戦いから戻り、傷ついた体を引きずりながら家に帰る途中だった。
道の真ん中に、誰かが倒れている。
普通なら無視して通り過ぎるのだが、その時は何故かその男の顔を覗き込んだ。
酷く衰弱している男だった。そして、その手に握られているのは…カードデッキ。
―こいつも…ライダー!?
はっと息をのむ。
その時、ゆっくりとその男が目を開いた。
そして静かに、私を睨むように見る。
その時、体中に衝撃が走った。
すぐに男は気を失ったが、その瞳が頭から離れない。
何故か放って措けなくて痛む体に鞭打ちながらその男を家まで運んだ。
―そして、現在に至る。


『俺を拾って、後悔してるのか…?』
浅倉の言葉に、私の思考は現実へ戻ってきた。
『いつ殺されても、おかしくないんだぜ?』
ククッと低く笑いあのときのようにその瞳をこちらに向けてきた。
確かに、何故拾ってきてしまったのかは分からない。
そして、いずれかはどちらかがどちらかを殺す運命。
…たとえ、そうだとしても。
「後悔なんか、していませんよ。」
『!?』
私の思いがけない言葉に、浅倉が目を見開く。
「私は、自分の行動に間違いがあるとは一度も思ったことがありませんから。
 そして、貴方といると退屈しませんし。」
驚きの表情の浅倉に、にこりと微笑んでみせる。
ようやく硬直から解放されたらしい浅倉は、ふいっと横を向く。
その口元は、笑っているようにも見えた。

この生活は、まだまだ続きそうだ。








深夜二時。
そろそろ寝ようかと、資料を片付ける。

寝室に行き、また私は言葉を失った。

本来私が寝るべき場所に、二人の影。
手をつないで気持ち良さそうに眠っている、浅倉とベノスネーカー。
「…。」
どかす事もできずに、その場で私は固まった。

俺、ボルキャンサーは眠れなかった。
水でも飲めば落ち着くかと、雅史の世界へ出る。
その時、ソファーに誰かの気配がした。
[雅史…?]
そこには、毛布にくるまり丸くなって眠っている雅史がいた。
何でこんな所に寝ているんだ?
不思議に思い、ベットを見ると大体の状況は分かった。
[…まったく、お人よしだなお前も。]
ずれた毛布をかけなおすと、俺はミラーワールドへ戻った。











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シリーズ第一弾です。
…訳わかんないよぅ(p_q)
でも好きです。へびかにへびかに。

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