+++Gentle hand+++


目を覚まし時計を見ると、朝の6時だった。
そしてそれと同時に、身体が不調を訴えていた。
頭が痛い。身体がだるい。喉が痛い。
…理由は簡単。典型的な風邪だ。
きっと毎日ソファーで寝ていることで風邪でもひいたのだろう。
それでも、仕事は休めない。
適当に風邪薬を飲みこのままで運転はまずいと思い車のキーを置いた。
コートを羽織り外へ出ようとした時、突然ぬっと見慣れた顔が現れた。
「うわっ!!」
驚いて数歩後ずさりをした後、すぐにその人物が浅倉だと分かった。
『…。』
「っ…!!驚くじゃないですか!!」
浅倉は私の言葉を無視して机に置いてある車のキーをじっと見つめていた。
『…車。』
「は?」
『車…乗って行かないのか…?』
突然投げかけられた質問にどう答えて良いか分からずに口をパクパクさせる。
何故か、浅倉には知られたくなかった。
「今日はっ…電車で行く日なんです…。」
苦しい嘘に浅倉も少し反応して片目でチラッとこっちを見る。
『顔…青白いぞ…。』
まるで何処かの裁判で会ったあの有能な弁護士のようにこちらの痛いところをついてくる。
「暗い所に居るんだから白っぽく見えて当然でしょう!」
ついと顔を逸らし家を出た。
おい、と浅倉の声が聞こえたような気がしたが気にせずにつかつかと駅へ歩いていった。


…どうも様子がおかしかった。
気がつくと須藤の事ばかり考えている自分にいらついてどかりと床に座った。
こういう時に限ってベノスネーカーもボルキャンサーも居ない。
イライラする。
ミラーワールドでモンスターでも倒そうかとカードデッキを取り出す。





…駄目だ。

余計にイライラが増した気がしてカードデッキを乱暴に机の上に投げた。
デッキはガシャンと金属的な音を立てて机の上に転がった。
腹が減ったのでヤキソバでも食おうかと立ち上がる。
その時、電話が鳴った。

(あの…もしもし…?)
電話を取ると、須藤と同じ課の奴からだった。
『…何か用か?』
(いや…あの…実は…。)
『だから何だ?』
口を濁す相手にイライラが増しおもわず聞き返す。
(須藤さんが…勤務中に倒れて…。)
さっと目の前が暗くなったような気がした。


[浅倉…何かあったのか…?]
【いや…俺が聞きたい…。】
威がなにやら電話で話してすぐに走って出て行ってしまったあと、俺はボルキャンサーとこっちの世界に出てきた。
[やけに朝から機嫌が悪かった…よな…?]
【あぁ…。】
威が出て行ってから20分、未だに帰ってこない。
流石におかしいと思い二人で顔を見合わせる。
その時、ガチャリとドアの開く音がした。
[帰ってきた…。]
【帰ってきたな…。】
恐る恐るドアの元へ行くと、確かにそこには威がいた。
しかし、その姿を見たとき、俺は頭がおかしくなってしまったのではないかと思った。
須藤雅史を横抱きにしている。
そう、お姫様抱っこというやつだ。
【たたたたた威!?一体何が…?】
[雅史…!?]
俺の混乱が収まるのとボルキャンサーが須藤雅史の異常に気がついたのが同時だった。
元から肌が白い方なのだが、いつもんまして顔が青白い。
苦しいのか薄い胸をせわしなく上下させている。
そして、いままで見たことがない威の焦った表情。
『退け…。』
低く呟き、俺たちを押しやると部屋の奥へ入っていった。
そして俺たちも威の後を急いで着いて行った。



夢を見た。
何処までも沈んでいくような夢を。

何かを求めるように手を伸ばす。
誰もこの手を握り返してくれる人など居ないと分かっているのに…。

その時、がっと手をつかまれた。
急激に意識が浮上する…。


そこで目が覚めた。
目の前には見慣れた天井が広がっている。
よく状況を理解できずにゆっくりと体を起こした。
酷く身体が重い。
辺りを見回したが誰も居ないようだ。
身体を支えられずにまたベットへ倒れ込む。
自分の右手を見た。
―あの時の手は…幻だったのか…?
その時、誰かが入ってきた。
『…目…覚めたか…?』
「浅倉…?」

体を起こそうとする私を片手で制しそっと額に手を寄せる。
ひやりとする感触にそっと身じろぎをすると軽く頭を小突かれた。
「何…。」
『無理しすぎだ…。』
浅倉は少し寂しそうに笑いそっと私の顔にかかる前髪を掻きあげた。
『お前…倒れたんだぞ…。』
「そうですか…。」
酷くかすれた声に自分でも驚いた。
「ボルキャンサーと…ベノスネーカーは?」
『自分達の世界に戻った。いや、戻した。』

そう言う間も静かに私の顔を見つめている。
『早く良くならないと困る…。』
「え…?」
聞こえるか聞こえないかぐらいの声で浅倉が呟く。
そして、照れたように顔をそらした。
『毎日ヤキソバは…流石に飽きるからなっ…。』
顔を紅く染めて弁解するように言った。
その時だった。
『須藤…?』
頬を温かいものがつたった。
気がつくと、私は泣いていた。
止まることの無い涙に手で目を覆った。
『どうした…?』
「何でも…無いです…。」
そっと浅倉が私の髪を撫でる。
その手は、とても優しいものだった。

そうか…あの時の手は…










いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
時計を見るともう朝の5時を指していた。
軽い頭痛を覚える。
完全に寝過ぎだな…。
しかし、昨日より遥かに身体が楽になっている。
ベットから降りようと床に足をつけようとしたその時、

ぐに。

何か奇妙な感触がして下を見た。
そこには、床に寝転んでいる浅倉。
起こそうと踏まないようによけて降り浅倉の肩に手をかけ軽く揺さぶる。
しかし、一向に目覚める気配が無い。
「…?」
よく見ると、顔が赤い。
そして、息も荒いような気がする。
「…まさか」


『林檎が食いたい。』
「はい。」
『氷枕ぬるい。』
「はい。」
『腹が減った。』
「はい。」
『暇だ。』
「はい。」


次の風邪の犠牲者は浅倉だった。
しかし、すぐに良くなるだろう。
雅史がまた仕事を休んでつきっきりなのだから。
そういえば、どことなく雅史から浅倉威への接し方が変わった気がする。
気のせいだと思いたい。
何となく野生の勘がそういっている。

…しかし、なんだかんだ言って、この二人は結構仲が良いのだ。



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訳ワカメー!!(お前もな)
逃げます。[レイファ]

はーい皆覚えてるかーい?(何)
この度レイファの小説に挿絵を入れるという無謀な挑戦に出てみました。
世界観が崩れた方ごめんなさい;
私だって逃げるどー。・゜・(ノД`)・゜・。[桜花]
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