帰ってきた私の目に飛び込んできたのは、大量の酒。
「何ですか…それは…。」
『酒だ。』
そんな事は分かっている。



+++Alcohol or Desire+++



『たまにはいいだろう。お前も飲むか?』
そういう浅倉の顔は僅かに赤くなっている。
テーブルに目を向けると既にビール缶が2、3個転がっていた。
―酔っているな…。
『飲めよ。』
[そうだー飲めー雅史ー!!]
【今日は何も言わず飲んどけ♪】
声が三重になる。
「貴方達まで…何で飲んでいるんですか!!」
酔っているボルキャンサーとベノスネーカー。
いつの間に酒なんてものを覚えたのだろうか。
「とにかく、明日は仕事なんで私は飲みません!」
上着を乱暴にかけ、床に転がっている缶を拾おうとする。
だが、突然浅倉に強くネクタイを引っ張られる。
バランスを崩す私を浅倉が抱え
そして。
「…!!!!」
不覚だった。
口移しに流される液体。
苦味が口内を侵していく。
…しかもそのまま離れようとしない。
「っ!!!」
息苦しさに浅倉の背中を強く叩くとやっと口が離れた。
「何するんですか!!」
涙目になる私に浅倉は怪しげな笑みを浮かべた。
『おすそ分けだ。』
「浅倉ぁ!!」




















『…雅史…?』
「黙って下さい!!」
須藤の目から流れる大粒の涙。
手にはビール。
その下には先程よりかなり増えたビール缶。
しゃくりあげる須藤を必死に浅倉が宥めている。
その横には、既にダウンしたベノスネーカー達。
「何で貴方は…!!」
『?』
「っく…。」
そしてまた突っ伏して泣き始める。
『(こいつ…泣き上戸だったのか…!?)』
何時までも泣き続ける須藤に浅倉は自棄酒とばかりに酒を呷った。









しかし。
『…雅史?』
突然動きの止まった須藤に俺は顔を覗き込んだ。
上げられた須藤の顔は…一言で言うと「修羅」。
ゆっくりと立ち上がる須藤。
ふらふらとベノスネーカー達の所へと歩み寄る。
『ま…雅…
一撃。
【ぐあ!!】
「…。」
声も出ない。
ベノスネーカーを蹴り上げ、ボルキャンサーの角を引っ張りあげ、
【ぐおっ!!】
[い…イタタタタタタタタタ!!!]
殴り、引きずり倒し、技をかけ、銃を向け。
【うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!】
[やめろぉ!!]
「獣なら獣らしく…黙っていればいいんですよ…。」
生きている心地がしない、と初めて思った。

…やがて、ベノスネーカー達は動かなくなった。
おそらく、朝までずっと。
須藤は満足げな表情を浮かべながら俺の隣に座った。










またもおとなしくなる須藤。
少しずつ、酒を口にする。
「お酒なんて…久し振りですよ…。」
ぼそりと呟かれた言葉に、俺は須藤の方を向いた。
『…どうした?』
「父と…約束をしていたんです…。大人になったら…一緒に飲もうと…。」
『約束…?』
少し悲しげに微笑む須藤。
「そうです。結局守れなかった…。」
『…?』
「なんでもないですよ。気にしないで下さい。」
言い終わると同時にネクタイを解き始める。
「それにしても…暑くないですか…?」
そして、ワイシャツのボタンも。
『雅史…?』
「威…。」
胸元をはだけさせたままゆっくりと近付く須藤。
少し潤んだような目で、俺を見ながら。
『お…おい…!!』
「…っ。」
目から零れる涙。
その時俺は、何も考えられなくなった。
重なる唇。
背中に腕が回された時
「う…。」
突然力を無くす身体。
寄りかかるように意識を失う須藤。
『お…おい!!雅史!!雅史!!』
くー。
『…。』
聞こえてきたのは規則正しい寝息。

もちろん寝れる筈も無く、明け方まで俺は欲望と戦う羽目となる。

















鈍い頭の痛みに目が覚める。
ゆっくりと体を起こす。
どうやら、此処は居間らしい。
何故こんな所で寝ているのだろう。
昨日の夜の事を思い出そうと暫くぼうっとする。
何気なく視線を落とすと
「…浅倉ぁ!?」
すぐ横で寝ている浅倉。
辺りを見回すと
―大量の酒。
―乱暴に置かれた上着。
―解かれたネクタイ。
―そして、はだけている胸元。
「つっ…!!」
急いで胸元を隠すように押さえる。
「…何を…何をしていたんだ私は!?」
『俺は…何もしていない…。』
下から聞こえた声にびくりと身体を震わせた。
「…え?」
『只、昨日のお前は凄かったぜ…。泣いて…声を上げて…俺を誘って…。』

額に当たる、冷たい感触。
間違いなく、銃身。
『雅史…?』
「記憶を…いや、貴方の存在を…消します。」


須藤に二度と酒は飲ませまい。
一瞬花畑と綺麗な川を見た浅倉とベノスネーカーとボルキャンサーは固く決心をするのであった。




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先に謝ります。すいません。
いやもう俺という存在がすいません。
須藤さんは泣き上戸・殴り上戸。そして・・・・なんですねぇ(何)
いい所(?)で切ったのはレイファに勇気が無いからです(笑)

カミソリレター大歓迎です。



帰らせて。
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