+++04:黒を白に+++

真夜中に鏡の向こう側から現れる黒い影。
影は俺に向かって、こう言った。
「俺を、受け入れろ。」と。

俺は拒んだ。
影から感じられる禍々しい空気。
それがこの体に入ったら、俺が俺じゃなくなりそうで。

影は一瞬、悲しそうな笑みを浮かべた。
それから俺の顔を見た。
「俺はお前の中の黒だ。そしてお前は白。」

白と黒。
相対する存在。

でも、今の俺の中には黒がある。

「それは黒ではない。」
影は俺の目を見ている。
「お前は無駄に優しすぎる。
 普通ならそこまではしないものを。」

でも。
ちゃんと答えを出したはずなのに。
それでも決心ができないんだ。

「本当に、お人好しだな。」
ククッと笑う。
「お前には、他の誰かを犠牲にする勇気がないだけだ。」

何処かで聞いたような台詞。
俺は英雄になんかなりたくはない。

「まあ、それがお前の答えなら、それで良い。」
でも。
俺はそれを遂げる事ができないんだ。

どうして。
どうして。

「残酷な事だ。」
影は鏡から出てきた。
「ずるり」と音がする様だ。

「これでは
 お前が黒ではないか。」

そう。
きっと俺が「黒」。

「自分の信じる事すらできない
 そんなお前は、どんな悪よりも黒だ。」

この世界で俺が
一番間違っているのか。
きっと、そうだ。
自分の答えすら遣り遂げられないなんて。

「お前の中は矛盾だらけだ。」
影の哂いが聞こえる。
「どうして、己の信じる事ができない?」

信じる事。
戦いを、止めたい。
でも。

「戦いを止めれば
 蓮の恋人が救えないからか?
 北岡が死ぬからか?
 優衣が救えないからか?」

そうかもしれない。
でもそれだけじゃないような気がする。

「それともお前自身が
 戦いに未練でも感じている?」

いつのまにか
戦いに慣れてしまったこの体。

「お前も本当は
 戦いたいのか?」

違う。
違う。
違ってほしい、でも。

ふう、と溜息をつく声。
影は俺に近づいた。
「お前は、お前だ。
 今更悩んでどうする?」

そうだ。
俺は、俺。

「吹っ切れてしまえば良い。
 この戦いには同情もない。」

「皆己の信じる事に向かって戦っている。
 なのに何故お前はできない?
 お前は単純な筈だろう?」

そうだ。
俺は、城戸真司。
己の信じる者の儘に、動く者。

「そうだ、それがお前だ。」
影の笑顔。
こんなにも柔らかいものだっただろうか。

「そして、俺だ。」
影の手が淡く光りだす。

「俺の役目は終わったらしい。
 お前の元へ還っても良いか?」

影の役目?

「俺の役目は
 黒がかったお前を白くする事。
 今のお前は、信じる事だけを追いかける
 白の、存在。」

どうやら俺は
無駄に悩み過ぎたようだ。
この手は黒く染まっていた。

俺は一度深呼吸して、
この両手を広げて。
思いっきりの笑顔で言ってやった。

『有難う。
 戻っておいで。』

影は
黒を白にする存在。

俺は
やっと信じられる本当の答えを見つけた。


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無謀小説。
つーか小説かコレ?(ぉぃ)
登場人物が分かりにくいです;;ごめんなさい。
嗚呼、精進しなきゃ……

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